【自然な発想で解ける!】2018年東大古文の解答例&徹底解説!【東大生の過去問解説】

みなさんこんにちは、ポケット予備校です!

この記事では、現役東大生が2018年度東大入試の古文の問題について解説します!

問題はこちらからご覧ください。(東大HPにとびます)

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2018年度東大古文の講評

この年度の東大古文の出典は『太平記』です。著者不明の室町時代前期に書かれた作品です。

「軍記物語」というジャンルに分類され、後醍醐天皇の即位と倒幕計画、足利尊氏の力による鎌倉幕府滅亡、建武の新政と室町幕府成立、南北朝の動乱までを描いています。大学入試における出題頻度はそれほど低くはありませんが、超頻出というほどでもない、という程度です。

さて、この年度の東大古文の難易度ですが、「やや易化」程度でしょう。和歌の解釈が若干難しいかと思われますが、それ以外の部分に関しては、基本的な単語と文法の知識があればなんとか対応できる程度のものだと思われます。

なお、これ以降の「2019年度」「2020年度」では東大古文の難易度は「易化」であり、この年度以降現在に至るまで一貫して東大古文は易化傾向にあると言われています。

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本文の要約

(前書き)美しい女房の評判を聞いた武蔵守高師直は、侍従の局に仲立ちを依頼したが、すでに人妻となっている女房は困惑するばかりだった。

侍従の局が女房の様子を報告すると、師直は女房の心を動かそうと恋文を送ろうと決めた。兼好という能書家を呼び寄せ、言葉を尽くした手紙を書かせて女房の元に送った。だが、使者が戻ってきて、女房は手紙を開きすらせず捨ててしまった、誰かに見られてはいけないとその手紙を持ち帰ってきた、という報告を聞いて師直は気を悪くし、兼好に対して怒りをあらわにした。

そのようなところに公義がふと現れた。師直が「つれない態度の女房をどうすればよいか」、と相談すると、公義は「どんな女房でも、男が慕うのに靡かない者などいない。一度手紙を送りなされよ」、と言って師直の代わりに手紙を書いたが、それは言葉はがなく和歌だけの手紙だった。

(和歌)突き返されてしまった手紙でも、あなたの手が触れたのだろうかと考えると

この手紙を使者が女房のもとに持っていくと、女房は歌を見て頬を赤らめ、「重きが上の小夜衣」とだけ言って、家の中へ入って行ってしまった。使者の報告を受けて師直が公義を呼び寄せ、この言葉の意味について、もっと衣服がほしい、という意味なのかと尋ねたところ、公義は「いや、そうではありません、新古今集の歌の一部を引用して、『私は人目だけを気にしている』と言っているのだと思われます」と言ったので、師直はたいそう喜んで、「あなたは弓矢だけでなく、歌の道でも名人なのだなあ」、と褒美を与えた。こうして兼好と公義への評価は逆転した。

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設問の解答・解説

解答

ア:開けて見ることさえなさらず

イ:かえって和歌以外に添える言葉もなくて

エ:今度の機会は悪くない

解説

傍線部ア・イ・エを現代語訳する問題。

傍線部ア:「だに」は否定表現と一緒になることで「〜さえしない」という意味になる類推の助詞。ここではあとの「ず」と対応して類推の意味を形成している。

傍線部イ:「なかなか」は「中途半端に」あるいは「かえって、むしろ」という意味の副詞。ここでは「かえって」の意味を採用して「かえって言葉はなく」という意味になる。ここでの「かえって」とは、「前の文章で兼好が言葉を尽くした手紙を女房に送ったこととは対照的に、かえって言葉はなく」、という解釈だろう。ただし、ここで手紙に本当になんの言葉も書いていないわけではなく、実際には和歌が添えられているのだから、「和歌以外に添える言葉がなく」と説明を加えた方が親切であろう。

傍線部エ:「あしからず」は基本単語で「悪くない」という訳し方でよい。ここでのポイントは「たより」の訳し方だろう。「たより」は古語の世界では「頼るもの」「つて」「手紙」「機会」などたくさんの意味をもつ超重要単語である。傍線部周辺の物語の流れを確認しておくと、まず兼好が師直の代わりに書いた恋文が女房に見向きもされなかった後、公義が師直の代わりに女房に書いた恋文を見た女房が顔を赤らめる、という反応を見せたのに対して、使者が「それでは(たより)は悪くない」、と女房の袖を掴んで返事を催促する、という流れだ。「たより」の複数の意味を知っている人は一つ一つの意味を本文に当てはめ「たより」を「機会」と訳す正解を導いてほしい。また、この意味を知らなくても、兼好の手紙の時と違って公義の手紙に対する女房の反応が良いことに対して、使者が「今度の女房の反応は悪くない」と思うだろう、と想像してこの意味を導いてほしい。

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解答

愛する女房の手に触れたと思うと、手紙までも愛おしく思われるから。

解説

傍線部ウについて、自分が書いた手紙なのに捨ておけない理由を答える問題。

実は、和歌だけで答えが完結する問題。和歌を訳すと

「あなたに突き返された手紙ですら、あなた(女房)の手が触れたと思うと、自分で書いた手紙ながら打ち捨てておけない」

となる。これに、この手紙がそもそも師直から女房への恋文であることを念頭に置きつつ、「愛する女房」などの表現を付け加えれば良い。

解答

女房の返事に対する解釈として師直が提示した、衣と小袖を師直に送ってほしい、という意味。

解説

傍線部オ「さやうの心」とは何を指しているか答える問題。

直前に師直のセリフがあるのだが、その最後に「これはなんと言ふ心ぞ」という箇所があり、傍線部オと「心」という単語でつながっている。ここでの「心」は「(和歌の)意味」という意味であることに注意。この師直のセリフでは、師直の恋文に対する女房の言葉「重きが上の小夜衣」について師直が自らの仮説を提示した後、改めて公義に「どのような意味か」と言葉の意味を尋ねている。そしてその師直の仮説に対して「そのような意味ではない」と否定を行ったのが傍線部の箇所なのである。よって、師直のセリフ内で師直が独自に行った女房の言葉への解釈箇所を見つけ出し、訳せば良いとわかる。つまり、「女房が師直に対して、衣類を送れ、と指示している」という解釈のことだ。以上をまとめる。

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解答

自分の妻でない、人妻の身である自分と関係を持ってはいけない、ということ。

解説

和歌の一部に引かれた傍線部カについて、掛け言葉に注意しつつ女房の立場から説明する問題。

まず問題の指示にある「掛け言葉」が何であるのかを考えるのが一番のヒントだろう。その掛け言葉とは「つま」であろう。これは、「妻」と「褄(和服の裾の左右両端部分)」の二つの意味を持つ。なお、大学入試で出題されやすい掛け言葉は数が限られているので、予め暗記しておくと和歌の解釈問題でも役に立つことが多い。

さて、掛け言葉がわかったら傍線部を訳していこう。「な重ねそ」は「な〜そ」で禁止を表す表現であることがわかれば意味がわかる。以上から傍線部を直訳すると「自分の妻でない褄を重ねるな」となる。ここで「褄を重ねる」とは、異性と関係を持つことだと解釈してよい。この時重要なのが、大問の最初に書かれているリード文である。このリード文によると、師直が思いを寄せる女房はすでに人妻である。つまり師直と関係を持つことは許されないはずだ。つまり、すでに人妻の身であるためにもう結ばれることのない、妻となることがない自分と「褄を重ね」てはならない、ということを師直に言っているのである。以上を女房の立場に立ちつつまとめる。なお、師直からの手紙を読んで顔を赤らめた反応からわかるように、この和歌は本心ではなく、女房は実は師直と関係を持ちたいと思っているのである。

解答

人目を気にしているだけで、女房は実際は師直と関係を持ちたいと思っている、という解釈。

解説

傍線部キについて、公義が女房の言葉をどう解釈しているか答える問題。

まずは傍線部を訳す。「ばかり」が限定を表す助詞であることを考えると、「人目を気にしているだけだ」という訳になる。つまり、女房は前問の和歌にあったような「男女の関係」を師直と持ちたいと思っており、その障害として人目を気にしているだけだ(女房は人妻の身であるから)、ということだ。前問でも解説したが、師直からの和歌を見た女房は顔を赤らめるという反応をしており、特に師直を心から拒絶したいわけではない、師直に少し心惹かれている状態だとわかるのだ。以上をまとめる。

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