【自然な発想で解ける!】2018年東大地理の解答例&徹底解説!【東大生の過去問解説】

こんにちは、ポケット予備校です!

この記事では、現役東大生が2018年度の東大地理について解説します!

問題はこちらからご覧ください(東大HPにとびます)。

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第1問

設問A

解答

化石燃料消費増加と森林伐採の進行。

陸地面積・人口共に大きい北半球の夏に森林の光合成の活発化で二酸化炭素吸収が増加し、冬に暖房利用で二酸化炭素排出が増加。

Aはエネルギー消費急拡大で二酸化炭素排出が急増して気温が上昇するが、Dは二酸化炭素固定などの温暖化対策が進みエネルギー消費が抑えられて気温上昇も抑制される。

解説

二酸化炭素濃度の増加を「二酸化炭素排出量の増加」「二酸化炭素吸収量の減少」という二つの事象に分解して考えられるかがポイントです。

グラフを見ると、等しいペースで二酸化炭素濃度の増減が繰り返されています。この定期的な変動の原因として季節変動を挙げられるかがポイントです。

具体的には、北半球の方が南半球に比べ陸地面積、及び二酸化炭素を吸収してくれる森林の面積が大きいため、北半球の夏季には大量に二酸化炭素が吸収されます。一方北半球の方が南半球に比べ人口が多く、また暖房の方が冷房よりも化石燃料の消費量が多いことを知っていれば、北半球の冬季には大規模な暖房の利用で二酸化炭素排出量が増えることも解答に盛り込めるとよいでしょう。

基本的には地理的な知識がなくても点数が取れる問題です。とりあえずは、ケースA、ケースDについてグラフから読み取れることをもとに、問題の指示通りそれぞれのケースでの人間活動と地球環境のあり方について答えます。

ケースAは二酸化炭素濃度が最も急激に上昇しているケースです。この時、人間のエネルギー消費が最も活発で二酸化炭素が大量に排出され、気温の上昇が予想されます。一方ケースDは二酸化炭素濃度の上昇が抑えられています。この時はエネルギー消費が抑えられ気温上昇も抑制されていると言えるでしょう。

以上を指定語句を用いつつ解答します。なお、指定語句の「固定」が難しいですが、これは「二酸化炭素固定」、つまり大気中の二酸化炭素を大気中から分離・吸収させる技術を示すときに使います。この場合は、ケースDの説明の時にこの用語を添えることになります。

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設問B

解答

ハリケーン−北〜中アメリカ

サイクロン−南アジア

低緯度では貿易風に、高緯度では偏西風に流されるため。

寒流によって海水温度が低く、上昇気流が発生しないから。

人口増加で災害に脆弱な沿岸の低地での居住が増加する上、温暖化による海面上昇で高潮の被害を受けやすくなる。

解説

東大で例年数問出題される単答問題(客観問題)。これは難易度も高くないので、正解しておきたい。

問題文では北半球と南半球が分けて述べられているが、要するに「北半球・南半球ともに、熱帯低気圧は低緯度地域では西向きに進み、高緯度地域では東向きに進むのはなぜか」という問題。これについては、低緯度、高緯度での風の吹く方向の違いに注目して記述すればよい。1行しか解答欄がないので、簡潔に述べることを意識すること。

熱帯低気圧の発生メカニズムがわかっていれば、解答の糸口を掴むことができる。熱帯の赤道近くでは海水温度が高く、強い上昇気流が生じ、これが熱帯低気圧となって極地の方向へ進むことになる。つまり、南米大陸の赤道付近の海水温度が低いことが原因なのではないか、と見当をつける。そこで、南米大陸西岸では寒流のペルー海流が流れているために海水温度が低いことが思い出そう。

やや難しいかもしれないが、問題文の誘導に乗りつつ答えを導いていく。熱帯低気圧の強度や発生頻度が増大しなくても、熱帯低気圧による被災者が世界的に増加する「自然的要因」「社会的要因」が存在するという。この二つの要因についてそれぞれ考えていく。

「自然的要因」としては、地球温暖化による海水面上昇を思い浮かべてほしい。熱帯低気圧による被害の一つに高潮があるが、これに温暖化による海水面上昇が重なることで、従来より広い範囲で浸水被害が生じる可能性がある。

「社会的要因」としては、発展途上国を中心にした人口増加が挙げられる。このような国では、海抜標高が低い地域にまで居住地域が広がり、沿岸部の人口が増加している。そのような状況で、上記のような高潮が発生すれば、被災者人口は大きく増大することになる。

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第2問

設問A

解答

中国本土の経済発展で香港の工業製品輸出は伸び悩んだが、シンガポールは周辺諸国のハブ港湾として中継貿易が盛んだから。

(ア)−オーストラリア

(イ)−ブラジル

輸出品である工業製品はコンテナ船の通行量増加が可能になるため、また輸入品である穀物は、陸上輸送と比べてばら積み船による輸送費が低く抑えられるため、それぞれ貿易量が増加する。

解説

香港とシンガポールでコンテナ取扱量の世界順位の変動に違いがあった理由について答える。リード文を読んでもわかるが、コンテナ船はコンテナを用いて貨物を運ぶ、つまり主に工業製品を運搬するものだ。要するに、香港とシンガポールにおける工業製品との関わりについて考えるのが近道だろう。

香港は中国本土に先駆けて工業製品の輸出が盛んであったが、香港からより賃金が低く経済成長著しい中国本土の都市への工場の移転などが見られる。つまり、工業製品の輸出が伸び悩んだためコンテナ取扱量も同様に停滞していると考えられる。

一方、シンガポールはそれ自体が工業製品の生産が盛んというよりも、周辺の東南アジア諸国で経済発展に伴い工業製品の生産が増え、それらの輸出入の際にシンガポールが貿易の中継地点として利用されているのだ。指定語句の「中継」から、シンガポールの中継貿易のことだと見当をつけてほしい。

単答問題。確実に正解したい。

(ア)は中国や日本など、東アジア諸国に鉄鉱石や石炭類を大量に輸出している国なので、世界最大の鉄鉱石輸出国である「オーストラリア」だとわかってほしい。

(イ)についてだが、(ア)ほど多くはないものの同じく中国や日本に鉄鉱石を輸出している。東大地理選択者であれば、「オーストラリア」「ブラジル」が世界の二大鉄鉱石輸出国であるという知識は持っていてほしい。つまり「ブラジル」である。

パナマ運河拡張による東アジア諸国の輸出入品への影響を答える問題。三行記述とやや長めだが、問題の指示通り、東アジア諸国の輸出品・輸入品に分けて考えればよい。方向性としては、運河拡張によって貿易量が増える、というような解答を作る。

東アジア諸国の輸出品は工業製品。指定語句に「コンテナ船」とあるので、「運河拡張でコンテナ船の通行量が増え工業製品の輸出が増える」、のような構造を作れる。

東アジア諸国の輸入品は穀物や鉱石など様々だ。これはリード文でわかるように、バラ積み船で運搬される。「陸上輸送」「輸送費」という指定語句があるが、これらをパナマ運河拡張による貿易量拡大という文脈で用いようとすれば、「運河拡張で陸上輸送よりも低い輸送費が可能になった」という流れになる。つまり、アメリカ大陸の資源をかつては陸上輸送で西海岸に運んでいたが、より近い東海岸から運河を経由して東アジアへ輸出することが可能になった、ということになる。西海岸への陸上輸送は、中南米よりは北米、特に穀物において盛んだろう。つまり、ここでは東アジア諸国の輸入品を「穀物」だと限定してよい。

以上をまとめる。

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設問B

解答

A−インドネシア、B−インド

イランは政教一致で、イスラーム法に則った宗教指導者による統治だが、A国では政教分離である。

イギリスの統治下で、マレーシアのゴム農園や南アフリカ共和国のさとうきび農園における労働者として強制的に移住させられたから。

経済発展が進んだ東南アジアからの工業製品の輸出が増加し、その材料として天然資源関連の輸入や投資も増加する。

解説

A国は東南アジアに位置し、世界最大のムスリム人口を抱えるので「インドネシア」。B国は南アジアに位置し、一億人を超えるムスリム人口を擁するので「インド」。特に「インド」は人口の大多数が教徒であるヒンドゥー教のイメージが強いかもしれないが、「南アジアに位置し一億人以上の人口を有する、パキスタンとバングラデシュ以外の国」なので、自動的に「インド」が導かれる。人口が一億人を超える国を知っておくと便利なことも多いので、是非暗記しておこう。

次にイランとA国「インド」の国の「統治」のあり方を「宗教」の位置付けに注目して記述する問題だが、「統治」と「宗教」が密接に関係しているか、つまり政教一致か政教分離であるかの違いがメインとなろう。イランでは宗教の最高指導者が事実上の元首であり、イスラーム法に則った政治が行われるが、インドネシアではイスラム教と政治が分離されている。

インド系住民がマレーシアや南アフリカ共和国に多数居住している歴史的背景を答える問題。これらの国の歴史について考えてみると、「インド」「マレーシア」「南アジア共和国」いずれもかつてイギリスの植民地であったことがポイントになるとわかる。また、指定語句「さとうきび」「ゴム」から、インド系住民が他のイギリス植民地に移住させられ、プランテーション農園で労働を強いられていたことを思い出そう。

問題文中にある「環インド洋連合(IORA)」は、大学入試の地理の範囲から大きく逸脱している。この組織について知っている受験生は一人たりともいないだろう。つまり、受験生は自分たちの知っている東南アジアと東アフリカインド洋沿岸諸国の情報をもとに、どのような貿易や投資が盛んになっていくかを考えなければならない。

まず、問題の指示通り両地域の経済発展の状況について確認しよう。東南アジアは工業化が進み経済発展が著しい一方、東アフリカのインド洋沿岸諸国では一次産品の輸出が主力である、貧しい国がほとんどだ。これをもとに、今後東南アジアからアフリカ東南部へどのような貿易や投資が活発になっていくか予想する。

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第3問

設問A

解答

A−沖縄県、B−東京都、C−埼玉県、D−福岡県

大都市部まで距離があり移動に長時間かかるのを嫌った若者が流出し、農村部を中心に高齢化と過疎化が進んでいるから。

都市規模が大きく雇用も豊富な広域中心都市を擁する都道府県では人口流入が見られるが、そこから距離の離れた都道府県では若者を中心に人口が流出し過疎化が進むから。

解説

図3−1をもとに、わかりやすいものから考える。Bは、バブル景気ごろには郊外へと人口が流出したが、近年は郊外から逆に人口の流入が見られる「東京都」。Cは逆にバブル期までは地方部および都心部から人口流入が見られ急激に人口が増加したものの、近年は都心への人口流出で人口が伸び悩む「埼玉県」。AとDについては若干悩ましいが、人口の自然増加が見られる「沖縄県」は「福岡県」よりも人口増加率も大きいと考えてA。残るDが「福岡県」。

語群の語句を用いつつ、山梨県と和歌山県の人口減少率が相対的に大きい理由を答える問題。両県に共通する要因を語群の語句を用いて考えると、「都心部からは『距離』がある」「大都市までの『移動』に時間がかかる」「『農村』部を中心に『過疎化』が進む」などとなる。これらを組み合わせて答えを作ればよい。

問題文が若干長いが、要するに「広域中心」都市などの大都市を擁する都道府県が、その他の都道府県に比べて人口減少率が小さい理由を答えればよい。要するに地方の都道府県から大都市を擁する都道府県に人口が流出しているのであり、その要因について語群の語句をヒントにしつつ記述しよう。

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設問B

解答

鹿児島は北部の低地から、山間部や海岸部の埋立地へ拡大。

広島は三角州の中心付近から、山間部や海岸の埋立地へ拡大。

金沢は扇状地から、砂丘方面に向かって拡大。

山間部では大雨時に土砂崩れが、海岸沿いの埋立地や低地では台風襲来時に高潮が懸念される。

解説

図3−3から読み取れることをそのまま書き出す。

まずは二つの都市の地図を見て、地形的な共通点を探してみる。すると、二つの都市ともに海と山が近く、その狭い間の場所に市街地が広がっていることがわかる。つまり、「山の方向からの災害」「海の方向からの災害」の二つについて、それぞれ特徴を書けばよいとわかる。

設問C

解答

中心業務地区である都心部には地価が高く、企業のオフィスやデパート、買いまわり品を扱う専門店が立地し、郊外部は地価が安いため住宅地や最寄り品を扱うスーパーマーケットが立地する。

モータリゼーションの進展や都心の地価の高騰を受けて商店が郊外へと移転したから。

解説

通常の出題形式とは違っていて戸惑うかもしれないが、二人の会話を読み、それに沿って解答を書いていけばよい。二人の会話をもとに都心部と郊外部についてそれぞれまとめると、

都心部:家賃が高い、デパートや専門店が立地、繁華街が存在

郊外部:家賃が安い、スーパーマーケットが立地

要するに、都心部と郊外部の違いを、「地価の高低」と「小売店のあり方」についてまとめればよいとわかる。指定語句もうまく使う。

日用品の購入に不便や困難を感じている市民のことを「買い物難民」という。彼らの多くは高齢者であることが多い。周囲に買い物ができる場所がなければ、自家用車を持たないことが多い高齢者は遠く離れた商店への移動も難しいからだ。大都市部でこのような「買い物難民」が生じる理由としては、一定の範囲内で商店の数が減ってしまう、つまり地価の高騰やモータリゼーションの進行で郊外へと商店が移動してしまうことが考えられる。

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