皆さんこんちには。ポケット予備校です。
さて、前回と前々回の記事では数学に関して多少なりとも内容に踏み込んだ記事を提供しましたが、今回は東大理系数学の対策方法に絞って記事を書きたいと思います。
さて理系数学対策と言って、前半後半二回に分けてお送りしますが、この2回でお話しするのはズバリ、
- 最近の傾向は?
- おすすめの参考書は
- いつまでに何をやるべき?
- 目標点は?
- 過去問の使い方
と言う点に絞って話していきたいなと思います。それではまず!
最近の東大理系数学の傾向
さて一言で最近の東大理系数学の傾向を述べるとするならば難化傾向にあります。それも例年段々と難しくなっています。これからの東大理系受験生は数学の対策を例年にもましてしっかりと行う必要があるでしょう。
まずここでは少し過去まで遡ってザックリとですが、東大理系数学の難易度の変遷を見ていきたいなと思います。
時期 | 難易度 |
1990年代~2000年 | 理系数学最難関の時期です。一説によると理科三類の合格者でも大半は半分ほどしか得点しておらず。理科Ⅰ類II類に関しては合格者でも20~30点代が続出だったとか。数学がもはや選抜試験としての意味は成していなかったと言われています。(是非はともかく)数学は捨て切って他の科目を対策し合格点に達しようとした受験生が多かったと言います。 |
2000~2008年ごろ | 1990年代とは打って変わり(もちろん年により難易度に差はありますが)問題としては易化が進みました。対比的に述べるならばこの時期には数学の得点分布が広いものとなり、受験生間に大きな差がつくという意味で選抜試験として大きな意味をなしていたでしょう。 |
2009ごろ~2014 | この時期は難化が進みました。とはいえ90年代ほどの難易度ではなく、数学が苦手な人はこけて痛い思いもしたけれども、得意な人ならば周りと大きな差をつけられた時期でもあります。過去問演習の際は、全完を狙うというよりも、(また下で解説しますが)自分の最低限の目標点に到達することを目標とするのが良いのではないでしょうか。 |
2015~2017 | この時期は前年度に比べて易化傾向が進みました。理科三類や数学が得意な受験生ならば、満点や100点以上の得点も見込めたでしょう。特に問題の易しかった2017年度の入試では理Ⅲの受験生は満点勝負だったとも言います。これまた90年代とは別の意味で、特に理科三類においてはある意味で選抜の意味はなしていなかったと言えるでしょう。 |
2018~ | 流石に東大もこのまま易化が進むとまずいと考えたのか難化しています。感覚としては年々難化し、20年度入試は2009年ごろの難易度といったところでしょうか。来年どうなるかわかりませんが、しっかりと対策をするに越したことはないでしょう。 |
上記の表がアバウトですが難易度の変遷となります。最近の問題は難しいですね。完答が狙える問題も少なくいかにして本番部分点をかき集めることが鍵となります。
もう一つ近年の理系数学に特徴的な事といえば、出題傾向の変化です。
確率の問題が理系では3年連続出題されていないことに代表される様、出題される問題の傾向が変化しています。とうとう20年度は複素数の目立った出題もありませんでした。今までの最頻出分野などに囚われずどの様な問題が来ても対応できる、穴のない圧倒的基礎力及び基礎事項の応用力が必要とされています。
さらにもう一点、近年の数学の’難化’という事とも関係するのですが、いわゆる典型問題の出題が減少し、特に20年度は1問も参考書によくある様な典型問題は出題されませんでした。
これまたいわゆるという表現になりますが、参考書をこなし‘量’を重ねる勉強よりも、数学的基礎事項を習得した上で、それらを自由自在に使いこなし初見の問題に対しても正しく議論を進められる数学力を身につけるための‘質’を求める勉強の方が大切なのではないでしょうか。
具体的に言い換えると、一つの問題に対して根気強く取り組む、解答を見て暗記する勉強ではなく自分で答案を作り上げる訓練が今まで以上に大切になるでしょう。特に別解なども大切にし、一つの模範解答に縛られないことが大切ですね。
おすすめの参考書
さてタイトルとしては、おすすめの参考書となっていますが、一言で内容をまとめてしまうと、東大理系数学攻略に必須の本はありません。
あえて言うとしたら過去問程度でしょう。過去問ができるようになるためのロードマップとしてある程度典型的なものはいくつかあるもののそんなものに縛られる必要は全くありません。
正確な数学力を身につけ、未知のものに対しても正しく、そして楽しく数学的アプローチをすることができれば東大理系数学は攻略されます。
逆に言うと、いくら典型と言われる問題集を何周としようとも数学的に自分で思考する能力を身につけることができなければ何の意味もありません。解答を写したり、(もちろん解けないといけませんが)典型問題を暗記するといった勉強には何の意味もないことを理解しましょう。
東大数学攻略の勉強法
さて以上で勉強方法を抽象的に述べたのですが、これから以下は少し具体的な勉強計画を見ていきましょう。まず東大数学攻略には大きく分けて2ステップあります。
- 教科書記載レベルの基礎的数学事項の徹底
- 応用や未知の問題に対して自分で正しく数学的に議論するトレーニング
まずIの基礎的数学事項の徹底ですが、これは書いてあるとおり概ね教科書に準拠します。教科書事項だからといって、馬鹿にしてはいけません。教科書の記載事項は全て自分で再現できる必要があります。山ほどチェック項目はあるのですが、例えば
- 三角関数の(高校教科書的)定義が言えますか
- ベクトルの内積の定義とそこから導かれる内積の幾何学的性質を導出含めて言えますか
- 微分係数を用いて単調増加、減少がわかる理由を証明含めて言えますか
- 余弦定理を証明できますか
などですね。このうち一つ目の三角関数の定義式は過去東大の入試でも聞かれています。大問の前半でこれを問い、後半で加法定理を証明すると言うものでした。
「このように、教科書に記載されている定理の証明は出題されうるから記憶しておくべき」と言うことをここで言いたいのではありません。これはⅡとも関連しますが、(微分などの極限が絡まない範囲では)三角関数は単位円を用いて定義され、その定義を考えると、証明の方針は自動的に立ちます。座標表示して幾何的性質から導くしかなさそうだと思い至るのは極めて自然な発想でしょう。
ただしこのためには教科書的な定義をしっかりと押さえ、定義(公理)とそれらから導かれるいわゆる公式をそのつながり含めて有機的に理解すれば、いわゆる暗記も減りますし、様々な問題に対するアプローチ方法も自然と見えてきます。
まあと言うことで、Ⅰの基礎力の徹底は決して簡単なものではなく、数学ができると思っている人でも一度立ち止まり確認した方が良いのではないでしょうか。
そのための参考書ですが、学校配布の検定教科書とともに、教科書レベルの事項を身につけるための演習書を一つ用意するのが良いでしょう。色々と市販の本があると思いますが、おすすめはいわゆる教科書傍用の問題集がいいでしょう。
例としてはチャート式や4STEPなどでしょうか。おそらく学校で配布されるのでそれを用いればいいと思います。これらに記載されている基礎問題を完璧に解けるようになり、扱われた数学の公式や考え方を初見の問題に正しく使えるようになるのが第一歩ですね。
さてⅡですがここからが大変です。共通テストや難関大学などでは教科書的事項をほぼそのまま使えば解けるような問題が出題されることが多いですが、東大などの最難関の大学になると、一筋縄ではいきません。身につけた道具(公式などの比喩ですね)を用いながら、議論を重ねてやっと答えにたどり着くと言う問題も少なくありません。
このように未知の問題に取り組むための訓練を積む必要があり、得点差が生まれるのは主にここの努力量の差異でしょう。
参考書や問題集としては他のサイトでも難易度別に紹介されていると思いますのでそちらを参照していただければと思いますが、ここで一応(あくまで一例ですが)挙げておきたいと思います。
- 教科書とチャート式問題集を併用して基礎を固めるとともに、チャート式の応用問題で思考力を鍛える
- 大学への数学 or 旧帝大や地方国立大学の入試問題で初見の問題に対する思考力を鍛える
- 東大の過去問&実戦、オープンの過去問で演習する
前述の通りあくまで目安でしかないので、皆さんの学校で使われている問題集に適宜置き換えたりしながら勉強を進めていただければいいと思います。結局はステップ3に到達できればよいのですから。
段階としては3つしかありませんが、各ステップかなり内容は多いので、根気強く取り組んでください。また人によっては、ステップ2を踏まずに3に行けることもあるので、そこは適宜調整してください。
~補足~
上のチャート式のような問題集、どうしても量が多くなってしまい演習量を積みたい方には最適なのですが、やるのに時間がかかる上、下手に急ぐと答えの暗記で終わってしまい何も身につかないことがあると言うデメリットがあります。そのような方々のために、オススメしたいのが東進ブックスの松田聡平先生の著書、
をこなせば、(多少数学Ⅲの応用問題に取り組むことが必要にしても)教科書の後ステップ3まで到達できるでしょう。こちらもお勧めですね。
まとめ
さて今回の「東大理系数学対策~前半~」を要約すると
- 近年の数学は難化傾向にあり一層の対策が必要
- 教科書的基礎事項の徹底が最重要かつ不可欠
- 典型問題ばかり追うのではなく真の数学的思考力を身につけよう
と言うことでした。それでは、後半で、またお会いしましょう!
東大理系、2019年入学で、ポケット予備校では理系数学を担当しています!この記事がみなさんの参考になることを願っています!