皆さんこんにちは!ポケット予備校です!
理科は2日目の最初の科目で、1日目の出来、不出来が影響を受ける科目しれません。その中でも化学は、理系受験生の多くが受験すると思います。
化学というと、覚えることが多い、計算量が多いと、苦手意識がある人が多いかもしれません。ましてや、東大化学は‥という人もいるのではないでしょうか。確かに、東大化学は問題量が多く、もう一つの理科科目との兼ね合いも考えねばならず、高度な情報処理能力が問われています。
そういった中で、少しでも合格に近づけるよう、現役の理系東大生が東大化学の近年の傾向と、その対策を紹介したいと思います!
東大化学の基礎知識
東大化学について、理解しておいて欲しいことがいくつかあります。
その前に、東大の理科の入試の仕組みについて、触れておきます。
まず東大理科について
化学、生物、物理、地学から二つを選び、受験することになります。2科目120点満点150分なので、1科目60点75分となります。
この選択科目は、自分の興味のあるものを選ぶのいいでしょう。この科目が点を取りやすいとか、噂されることがありますが、実際そんなことはない思います。
理科一類志望の多くは、化学、物理選択で、理科二類、理科三類は、化学、物理選択の方が多いですが、化学、生物選択者もある程度はいます。地学は、参考書等が少ないこともあり、趣味が興じて地学選択という人以外では選択する人はいないとは思います。化学、物理の選択者が多い以上は、東大化学は理系東大志望者は避けては通れない道になります。
60点で大問が3つあるので、恐らく均等配点で、大問1つにつき、20点だと思われます。2017年以降は、大問1が有機分野、大問2が無機分野、大問3は理論分野からの出題となっています。
東大理科の最初のポイントは、全ての科目で解答用紙が罫線だけが引いてあって、完全に自由記述であることです。
第1問の解答用紙のイラスト(注1)
そのため、自分でこの問題はこれくらい記述するかなと予想しながら、ちゃんと範囲に収まるように解く必要があります。これは厄介な点だと思います。
東大化学について
東大化学の問題ってどんな感じなの?という方もいると思います。
東大化学は、記号で答える、計算問題、短い記述、図を書かせる問題が中心です。時々少し長めの記述問題が出題されます。奇をてらった問題は少なく、教科書等の知識で一応は解くことができる問題です。
覚えているかどうかしか問われない簡単な暗記問題も、もちろん出ます。こういった問題を的確にうち流すのが、時間短縮の意味では重要です。
ここで、東大化学で問われているのは、以下の3点だと考えられます。
基本知識の暗記力、計算力、高度な考察力です。
基本知識の暗記力というのは、東大だから重箱の隅をつつくようなことまで、覚えなければならないというわけではなくて、基本問題集や、ご自分の使っている参考書に重要と記されているレベルを完璧に覚えることです。これが、簡単そうに見えて、難しいのですが。
計算力というのは、そのままです。東大だからといって、複雑な計算が要求されることはないですが、ある程度の小数の計算は早めにできるように、問題集での演習は必須だと思います。
高度な考察力というのは、数学の試験にも通じるところはありますが、初めて見る物質に対して、問題で与えられた情報から、類推したり、問題集でも見たことのない内容を、知ってる内容に落とし込む力です。
基本知識の暗記力は無機分野、計算力は理論分野、高度な考察力は有機分野で問われていると思います。
このように、概ね分野で分けることができるのですが、東大化学の一番の特徴は、1つの大問に対して、理論、無機、有機の各分野が混合しています。そのため、割り当てることのできる時間に対して、問題が多く、東大化学は膨大な問題量だと言われています。有機、無機分野で、理論の計算問題等がちらばめられています。ここは、意識しておいて欲しい点です。
最後に、東大化学の目標点について触れておきたいと思います。
他の科目の得手、不得手によって、もちろん変化はしますので、参考程度に確認しましょう。
理科1、2類‥化学が得意;40点代前半 化学が苦手;35点
理科3類‥化学が得意;50点弱 化学が苦手;40点
化学が本当に苦手、学習が不完全だという方は、30点、5割が合格点になるのではないでしょうか。
東大化学の傾向
まず、東大化学の近年の傾向を見てみましょう。
出題形式
東大化学は、この10年間で出題形式が大きく変わっています。この表をご覧ください。
2011年から2016年までは、大問3つで、大問1理論、大問2無機、大問3有機です。それぞれがさらに、2つの問題に別れていて、合計6問でした。2017年には、大問1有機、大問3理論という形で順番が変わりました。さらに、大問1有機が1題になり、全体で5問に。2018年には、大問1有機、大問2無機が1題の出題となり、全体で4題に。しかし、2019年は、2017年と同じで、大問1有機が1題となり、全体で5問。そして、今年2020年は大問1有機、大問2無機、大問3理論で、2016年までと同様に2題ずつで、全体で6題となりました。
大問番号 | 1 | 2 | 3 |
2011〜2016 | 理論 2題 | 無機 2題 | 有機 2題 |
2017 | 有機 1題 | 無機 2題 | 理論 2題 |
2018 | 有機 1題 | 無機 1題 | 理論 2題 |
2019 | 有機 1題 | 無機 2題 | 理論 2題 |
2020 | 有機 2題 | 無機 2題 | 理論 2題 |
このように、2017年以降、出題形式が頻繁に変わっているので、過去問対策の際は気をつけましょう。全体で見ると、大問の個数こそは変わっていますが、小問の全体の個数は、大きくは変化していません。ただ、やはり大問個数の増減は、問題文を読む量が変わるので、解くのにかかる時間は増減します。
次に、出題分野について、確認してみましょう。
出題分野
東大化学は、大問ごとにテーマこそは決まっているものの、その中で反応熱の問題、結晶の問題など分野横断に、様々な問題が出題されるので、一概にこの分野の出題が多いということは難しいです。特に無機の出題は、理論分野と絡めての出題が多いです。
各分野ごとに、主題頻度を見てみましょう。
有機は数年前は比較的に簡単な問題が多く、炭素数の小さな有機物(2011、2012、2015)の出題が多かったのですが、近年は高分子の問題が多いです。
アミノ酸(2013、2018)、糖(2014、2020)が出題され、それ以外の年では、有機の最後に習う分野であるポリマーの出題が中心です。高分子は特に暗記量に依存しがちと思われますが、東大では、初見の有機化合物の構造決定や、考察問題の出題がされます。
無機は分野の分類が多く、どの分野の出題が特出して、多いというのはないです。そのため、どの年にどの分野の出題がされるかというされるかというのが予想できないので、まんべんなく勉強する必要が生じます。実際に、気体の無機(2015、2017、2020)、金属の無機(2018、2019)、錯体(2012、2016)のような、無機独特の問題、結晶(2012、2013、2016、2020)、酸化還元(2011、2014、2015)といったメインが理論となっている問題が混合しています。
理論は、出題が少し偏っている印象があります。特に出題が多いのは、電離平衡(2011、2015、2018、2020)と化学平衡(2013、2014、2017)です。毎年平衡分野はどちらかが出ていると言っていいでしょう。そのため、平衡はしっかり対策が必要です。
その他に熱化学の出題も多く、化学平衡でも、熱が絡むので、熱化学の演習も必要です。
上記の頻出分野以外では、この10年で、理論の主要分野は、1回ずつ出題されています。
電気分解(2017)、溶解度(2015、2016)、蒸気圧(2016)、浸透圧(2012)などです。理論の問題は、有機と無機の大問でも、絡んでくるので、穴なく基本問題を仕上げることが必要だと思います。
東大化学の対策
では、本題の東大化学の対策を見てみましょう。
いつから勉強を開始したらいいんだろう?何からやればいいんだろう?苦手だから、合格点は確保したいけど、どうしたらいいんだろう?と様々な疑問があると思います。
いつから勉強始めたらいい?
最初に、勉強の開始時期についてです。
おそらく、高2までは英語と数学と国語の基礎を固めるために、その3科目優先というのは聞いたことあるのではないでしょうか。東大合格という視点では、理系、文系共にこの3科目で320点あることを考えると、この作戦は最適解だと思います。
そのため、化学に本格的に取り組むのは、高2最後の春休みからでいいのではないかと思います。この時期は人によって、問題集の進み具合などで、前倒ししても構いません。
それまでは、学校の進度通りに、一通りやっていくのが良いでしょう。それに併用して、市販の問題集を進めていくのが理想的です。
次に、何からやれば、良いのだろう?それをどういう風に進めればいいのだろうということについてです。
各分野の学習の順番ですが、教科書では理論→無機→有機となっています。理論は他との関連も多く、一番量も多いので、最初が確かに適しています。
無機と有機の学習順は、皆さんが何に重きを置くかに依存します。いずれもかなりの量の暗記を要する科目ですが、有機は演習量で、かなり身に付く分野です。そのため、無機の方がとりあえず、頭に入れなければならないという要素が強いです。
もし、高3になってからの模試でいい点が取りたいと思うのなら、模試は教科書の順番に沿うので、無機を先にやるのがいいと思います。
一方で、先に無機をやって、覚えても忘れてしまうから、後で勢いよく詰め込みたいという方もいると思います。この場合は、先に有機に取り組み、有機の演習をしながら、忘れないようにして、無機に移行する形になると思います。しかし、この場合は学校の進度と異なるので、自分で勉強を進める、ないしは塾等で先取りをすることになると思います。
化学の勉強に本腰を入れるのは、高2の春休みからなので、それまでと、春休み以降で、ここでは対策を分けたいと思います。
1 高2の春休みまでの対策
高校によって、また塾に通ってるかによって、進度が異なると思うのですが、この時期までに進度の早い人で無機をだいぶ進めていて、遅い人でも理論分野が概ね終わってるかなという印象です。
最初にインプットの説明です。この時期までは、学校の進度に合わせるのが理想的です。そのため、自分の使っている教科書、ないしは塾のテキストで構いませんので、その内容の読み込みをしっかりとしましょう。
例えば、その日の授業で酸化還元を学んだとしましょう。授業中に、全てを理解、暗記できているわけではないので、授業後等に一度は、教科書を読み込みます。その際に、オゾンは酸化剤として働いて、酸素に変化するなどの、その回で習った、酸化剤などの暗記を行います。余裕があれば、次の授業までに、もう一度読み込めたら、さらに定着していると思います。
教科書の読み込みって、本当に必要なの?という意見もあると思います。
読み込みの重要性ですが、社会と同様に、流れを掴むことが重要です。上の酸化還元の例でいくと、酸化還元の定義とはなんなのかというところから、酸化剤とはなんなのか、酸化剤の具体例は?、その式を書けるの?というように繋がっています。
もし、酸化剤の具体例だけ、復習しようと思うと、その物質が酸化剤なのかの判断もできていないのに、丸覚えという形になってしまう恐れがあります。そのためにも、授業の後に、一通り、教科書類を一度読み直す必要があります。
アウトプットはどうしたら良いでしょうか。アウトプットは問題を解くしかありませんので、問題集を使用しましょう。
この時期は、まだ化学の学習の1週目なので、受験用などは控え、教科書傍用の問題集で、基本的な事項が理解できているか等の確認を行いましょう。
問題集の取り組み方も重要です。
暗記分野に取り組むとき、間違っていたら、赤で書き直す等すると思います。これは、後で見返すことがあるなら有用ですが、問題集に使っているノートは自分が解いた後で、汚かったりするので、実際あまり見直さないことが多いと思います。
そこで、後で復習や見返すときのために、問題を解く用のノートと別に、もう1冊用意します。ここに、間違えたことや、知らなかった知識問題事項を書き込みのです。これを定期テスト前や、普段の復習で見返すのに、本当に便利です。
2 高2の春休み以降
ここからは学習のペースを上げていかなければなりません。
具体的にいうと、既習範囲の2週目の学習に入るのです。
ペースをあげるという意味は、先に進めるというよりは、復習+学校で新しく進むという感じです。
学校で新しく進む範囲は、これまでと同じように、読み込みで流れを掴むことが必要です。
ここでは、2週目に入る、既習範囲の復習についてです。
この復習には、2冊目の問題集が必要です。これは教科書傍用ではなく、受験用のものがいいです。取り組むのは、すでに概ね学習を終えている理論分野の問題を解きます。いきなり、2冊目の問題集に入るのが不安だという方は、この時期までに作ったノートを見返して、基本を思い出してから取り組むといいと思います。
この時期は、新しく習ったことは教科書傍用問題集、既習分野は受験用問題集と併用します。
問題集の取り組み方ですが、暗記分野は今までと同様に、別にノートを作って、復習しやすいノートを作りましょう。
計算分野は、受験用問題集になると、難しいものがあります。単純に計算が難しいだけのものはいいのですが、解き方など学ぶべくところがあるものは、こちらも別のノートに付け加えていきましょう。
東大化学は、量が膨大なために、要領よく解く必要があります。その練習も兼ねて、時間を測ることが重要です。受験用問題集では、問題を見て、解く前に何分で解こうかということを判断します。そして、例えば10分と決めたら、10分で解きますどうしても、無理な時間設定で解いていた場合は、10分が経っても、解いていいですが、基本的にはそこで解くのをやめ、なぜ時間がかかってしまったのか、無駄な解き方をしていないか振り返りましょう。
東大化学の勉強は、問題が解けるかどうかも、もちろん大事ですが、時間的な観点でも問題演習する必要があります。
受験用問題集も基本から応用までの範囲がありますが、2冊目は基本的なものをオススメします。夏休みごろまでには、2冊目も理論に関しては終わってしまうと思うので、夏休みからは3冊目に入りましょう。これは応用レベルの問題集がいいと思います。こちらも、同じように、理論から順に、進めていきましょう。
1冊目の問題集は、教科書傍用なので、何度もやる必要はないと思いますが、2冊目以降は、解き終わって、しばらくしたら、2周目に入るがいいと思います。新規の部分が少ない時には、受験用問題集で新しく進めるところと、2周目に入るところがあっていいと思います。もちろん、その後も3周目に入るのも大歓迎です。
ややこしいので、まとめてみます。
教科書傍用問題集
→新しいことは教科書傍用問題集、復習は基本レベルの受験用問題集
→新しいことは教科書傍用問題集、復習は応用レベルの受験用問題集と基本レベルの受験用問題集2周目
→復習は応用レベルの受験用問題集と基本レベルの受験問題集3周目
という形です。ここでは、全てを習い終わったタイミングで、3冊目に入る形にはしましたが、気にしなくて大丈夫です。ここまで来たら、あとは過去問になります。
過去問、直前期にについては、次回の記事で触れたいと思います。
オススメの問題集
ここからは、対策の部分で触れた問題集を紹介していきたいと思います。
教科書傍用問題集
1つの問題集の中でも、基本と応用で別れていているので、使い勝手がいいです。
基本レベルの受験問題集
おそらく全ての理系大学受験生が使用しているのではないでしょうか。分野別に別れていて、有名問題等しっかりカバーしてくれています。
6 化学標準問題精講の基礎版です。
応用レベルの受験問題集
2の問題集をやってから、こっちに移るという方が多いです。受験化学のスタンダードな問題が多く、この問題集がある程度解けるように、なれば過去問に移行しましょう。
4の問題集よりは、少し簡単めな印象があります。4の問題集がスタンダードな問題が多いのに対して、こちらは変わった問題が多いと思います。ただ、東大化学では、見慣れない問題も多く出題されるので、練習にはいいかと思います。
3 《新入試対応》化学基礎問題精講の応用版です。
東大の過去問
東大過去問問題集です。駿台が解答をつけていて、赤本よりは、解答が少し丁寧と言われています。
7の過去問問題集よりは、2年分多いです。俗にいう赤本ですね。年度別ではなく、分野別です。多くの東大受験生が使用しています。
まとめ
いかがでしょうか。今回は東大化学の解説を行ってみました。以下が、今回のポイントです。
- 東大化学は、基本知識の暗記力、計算力、高度な考察力が問われている
- 理論では平衡、有機では高分子の出題が多い
- 高2の最後の春からは、本腰を入れて化学に取り組もう
- 教科書の読み込み→問題集のサイクルを作ろう
- 問題集は、教科書傍用→基本レベルの受験問題集→応用レベルの受験問題集の3冊は取り組もう
一歩ずつ頑張って行きましょう!
注1)この画像はポケット予備校が作成したイラストです。実際の解答用紙に対して文字数や行数、配置などは正確ですが、縮尺が完全に一致するものではないことをご了承ください
東大理系、2019年の入学で、ポケット予備校では化学を担当しています!この記事がみなさんの参考になることを願っています!