【理系東大生による数学解説】~ベクトル編~

皆さんこんにちは、ポケット予備校です。

今回から数回にわたってベクトル分野を徹底的に解説してきたい思います。

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実はベクトルは簡単!?

さて、理系ならまだしも文系の方ならなんとなく取り付きにくくそのまま放置していて共通テストレベルの問題でも少し対策が怪しいという方も散見される分野ですが、結論から言ってしまうと

(少なくとも)高校分野のベクトルは非常に簡単

です。理論体系として数学ⅠAの分野のシンプルさに比べると多少なりとも入り込んでいるために、取り付きにくさを感じてしまう人が多いですがその分基礎から体系を理解してしまえば、入試で迷うこと、奇抜な発想を必要とすることなく問題は解答できます

(というのも前述の通り、基礎から曖昧な受験生が多いので奇抜な発想などで差をつけることがなく点差がついてしまうんですよね、、、)

というわけでその定義から応用まで含めてこれからの数回の記事で確認してぜひベクトルを得意分野にしてくださいね!

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ベクトルの定義

たいそうな見出しとしてしまいましたが、ベクトルとはそもそもどのように定義されるものなのか、およびその意味についてここで解説します。

(大学的な範囲まで含めると若干断定や定義を局所化しすぎな面もありますが、あくまで実ベクトル空間を扱っておりますので、ご容赦いただければ幸いです。高校数学の範囲において誤解や混乱を招くことは一切ないようには配慮しておりますのでご安心ください)

そもそもベクトルとはなんぞやと聞かれた時その答えは、数の並びです

数字を一個並べたら一次元ベクトル(すなわち皆さんの扱われる実数ですね)、二個で二次元ベクトル、三個で三次元ベクトル(ここが高校数学で扱われる分野ですね)、少し発展的かもしれませんが一般に$n$個並べると$n$次元ベクトルとなります。

並べ方についてですが、高校では基本的に横に数字を並べて$(x_1,x_2,\ldots,x_n)$と書く事が多いですが、逆に大学では$\left(\begin{array}{c}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{array}\right)$と書く事が多いですね。

ここで$n$としてしまいましたが、結論から言うとどちらで書いてもらっても構いません。前者を横ベクトル(そのままですね、行ベクトルとも)呼びます、後者を縦ベクトル(これまたそのままですね、列ベクトルとも)呼びます。

ただし答案の中で同一のものを行ベクトルや列ベクトルで別々に表記するのだけはやめましょう。本来これらは区別して扱われるべき別物ですが、高校範囲のベクトルにおいてはどちらの表記でも問題ないといった事情によるものです。

さて、こうして考えた数の並びであるベクトルに対して和および差を次のように定義します。(ここまた$n$で書いていますが、初めのうちは$n=2,3$を代入して考えていただければ大丈夫です)。

また、ここで$n$次元ベクトルの集合を$\mathbb{R}^n$で表しています。これは数学において一般において通用する記号です。もう少し具体的に書くと、$n$が自然数であると書く代わりに、$n \in\mathbb{N}$と書くように$\vec a$は$n$次元ベクトルであると書く代わりに、$\vec a \in\mathbb{R}^n$と書く事ができます。さて 

$ k\in \mathbb{R}として、\vec a,\vec b \in\mathbb{R}^nを、\vec a =\left(\begin{array}{c}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{array}\right), \vec b =\left(\begin{array}{c}b_1\\b_2\\\vdots\\b_n\end{array}\right)$とする。ここで以下のように定義する

$\vec a+\vec b= \left(\begin{array}{c}a_1+b_1\\a_2+b_2\\\vdots\\a_n+b_n\end{array}\right)\;\;,\;\;\vec a-\vec b= \left(\begin{array}{c}a_1-b_1\\a_2-b_2\\\vdots\\a_n-b_n\end{array}\right)\;\;,\;\; k\vec a = \left(\begin{array}{c}ka_1\\ka_2\\\vdots\\ka_n\end{array}\right)$

少し大袈裟に書きましたが、要はベクトルの足し算は成分の足し算で定義してベクトルの定数(スカラー)倍は成分の定数倍で定義してしまおうと言うわけです。さて、こうして定義されたベクトルの和や差、スカラー倍も、$n$次元ベクトルであることに注意しましょう。

当たり前かと思われますが次で述べる内積に関しては満たされていない性質です。

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ベクトルの内積

さて次にベクトル同士の和や差を定義したら積まで考えたくなるのが人情というものですね。ベクトル量の間に定義される積は様々に考えられるものの、基本的でありいい性質を持つものであり高校範囲で扱われるものとしては内積(と外積)があります外積は明示的には教科書では扱われないものの、特に3次元での図形問題を解く時に非常にいい役割をする事があり、特に東大受験生ならば身につけておいて損はないですし、身につけている受験生も多いでしょう。

さて前置きが長くなりましたが、そもそも前提として内積とは同じ次元のベクトルに対してのみ定義されるものです。この上で先ほどの$\vec a, \vec b$の間の内積(またの名をスカラー積)を次のように定義します。

$\vec a\cdot \vec b =a_1b_1+a_2b_2+\cdots a_nb_n =\displaystyle \sum_{i=1}^{n}a_ib_i$

日本語で言い換えるならば、成分を掛け合わせてその和をとったものとなっています。ここで内積は実数値になっていることに注意しましょう。ベクトルから実数を作り出す演算であるという認識は意外と大切です。さらに当たり前かもしれませんが、この定義から次の性質が従うことに注意しましょう。それはすなわち

$\vec a\cdot \vec b=\vec b\cdot \vec a$

$(\vec a+\vec b)\cdot \vec c=\vec a\cdot \vec c+\vec b\cdot \vec c$

証明

定義からまず$\vec a\cdot \vec b=\vec b\cdot \vec a$について

$\vec a\cdot\vec b= \displaystyle \sum_{i=1}^{n}a_ib_i=\displaystyle \sum_{i=1}^{n}b_ia_i=\vec b\cdot\vec a$

次に$(\vec a+\vec b)\cdot \vec c=\vec a\cdot \vec c+\vec b\cdot \vec c$についてベクトルの和の定義も考慮して

$(\vec a+\vec b)\cdot \vec c=\displaystyle \sum_{i=1}^{n}(a_i+b_i)c_i=\sum_{i=1}^{n}a_ic_i+\sum_{i=1}^{n}b_ic_i=\vec a\cdot \vec c+\vec b\cdot \vec c$

が従う

問題1

以上の公式から$ \vec c \cdot(\vec a+\vec b)=\vec c\cdot \vec a+\vec c\cdot \vec b$が成立することを証明せよ。

(答えは次の記事で解説しています)

ここで特に初めの交換則については次の外積では満たされない性質ですので注意しましょう。

さらに続けて外積(またの名をベクトル積)を次で定義します。ここで外積は3次元ベクトル同士のみで定義されることに注意しましょう。(細かいことを言うと7次元ベクトルでも考えられるのですが、高校数学においてそれが問題となることはほとんどないです。)

$\vec a \times \vec b = \left(\begin{array}{c}a_2b_3-a_3b_2\\a_3b_1-a_1b_3\\a_1b_2-a_2b_1\end{array}\right)$

大学範囲となりますが、行列式を用いると次のようにかけます。(とはいえ知らない方もいると思うので、2$\times$2行列に限った場合ですが、行列式の定義について解説しておきます)

$\left|\begin{array}{cc}a&c\\b&d\end{array} \right| = ad-bc$で定義される行列式を用いて$\vec a \times \vec b = \left(\begin{array}{c}\left|\begin{array}{cc}a_2&b_2\\a_3&b_3\end{array} \right| \\-\left|\begin{array}{cc}a_1&b_1\\a_3&b_3\end{array} \right| \\\left|\begin{array}{cc}a_1&b_1\\a_2&b_3\end{array} \right| \end{array}\right)$

とかけます。大学で線型代数のはじめを学習するとこの定義が後で述べる内積との関係もあり非常に分かりやすく覚えやすいものとなるのですが、受験生にはなかなか親しみにくいもだと思いますのでとりあえず流しておいてもらっても構いません。覚え方としては以下の写真に書いてある方法が覚えやすいでしょうか。(実際僕は高校時代この方法で記憶していました。)

ここで、外積においては上でも予告していたように$\vec a \times \vec b =-\vec b \times \vec a$であり、一般に $\vec a \times \vec b \neq-\vec b \times \vec a$であることに注意しましょう。

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問題2

定義に従って

$\vec a \times \vec b =-\vec b \times \vec a$及び$(\vec a+\vec b)\times \vec c=\vec a\times \vec c+\vec b\times \vec c$を示せ。

さらに上の二つの事実を用いて$ \vec c \times(\vec a+\vec b)=\vec c\times \vec a+\vec c\times \vec b$が成立することを証明せよ。

(答えは次の記事で解説しています)

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外積について

さてこのようにして定義される外積ですが、内積との関係で非常に良い性質があるのでそれを確認して今日の記事は終わりとしましょう。その関係とはすなわち次です。

$\vec a\cdot(\vec a \times \vec b ) = \vec b\cdot(\vec a \times \vec b )=0$

証明

定義からまず$\vec a\cdot(\vec a \times \vec b )$について

$\vec a\cdot(\vec a \times \vec b )= a_1(a_2b_3-a_3b_2)+a_2(a_3b_1-a_1b_3)+a_3(a_1b_2-a_2b_1)$

$=b_1(a_2a_3 – a_3a_2)+b_2(-a_1a_3+a_3a_1)+b_3(a_1a_2-a_2a_1)=0$

$\vec b\cdot(\vec a \times \vec b )$については、

$\vec b\cdot(\vec a \times \vec b )=-\vec b\cdot(\vec b \times \vec a )=-0=0$

として証明された。ここで最後から二番目の変形においては$\vec a\cdot(\vec a \times \vec b )$の結果を用いた($\vec a,\vec b$を入れ替えて考えた)

また次の回で2,3次元ベクトルと図形の対応に関して徹底的に言及しますが、このことは$\vec a\times \vec b$は$\vec a, \vec b$と直交していることを意味します。二つのベクトルが与えられた時そのベクトルと直交するベクトルを作り出す演算として外積は非常に大きな役割を果たします。

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