【2021年度版】現役理系東大生が語る東大数学対策~論理編~

皆さんこんにちは ポケット予備校です!

前回は概論編と言うことで記述答案の書き方を中心として東大数学で外せない論理ということに重点を置きましたが、今回はそこで述べた論理とは具体的にどういうものなの?といった疑問に備えて、大学受験数学を解く上で必須となる論理について具体例を中心として考察したいと思います。

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注として先に断っておきますが筆者は論理学を専攻して研究している学生ではありませんし、高校生にそこまでの解答が要求されているとも思われないので、以下では(本当は公理から出発すべき命題でも)感覚的説明を重視して、高校数学の範囲内で抑えておくべき論理を解説していきますのでその点はご了承ください。

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必要条件と十分条件

必要条件十分条件

この言葉自体は数学IAの範囲で出てくる言葉ですが、実際に習った時この言葉の意味を十分に理解してその後使いこなしている高校生はそう多くはないのではないでしょうか。そうは言っても大学受験数学において、特にそれが難関大学になればなるほどこの言葉の意味は蔑ろにできません。

定義

それではまず定義から確認しましょう。

定義  まず$A,B$を命題とする。

①「$A$が$B$の必要条件である」とは命題「$A \Rightarrow B$」が真となる事を言う。

②「$A$が$B$の十分条件である」とは命題「$A \Rightarrow B$」が真となる事を言う。

さて定義としては以上になるのですがこの定義を見ただけで完全に理解できる人はそう多くないですし、きっと教科書でこれと同様の定義を見た時同じことを感じた人は多いのではないでしょうか。以下ではこの定義の意味を具体例を挙げて解説し、感覚的に落とし込んでいきたいと思います。

そもそも命題って何?

このような疑問を持たれた方も多いでしょうし実際僕も初めて命題という言葉を聞いた時「これってなんだよ?」と感じました。結論から言うと、命題という言葉ははじめは無視して構いません。なんとなく数学でよく出てくる「お題」のようなものです。

(これまたアバウトですが)定義としては、「真偽が確定する文章または式」となります具体例としては、(i)1<2 (ii)2=3, (iii)4は自然数などです。

逆に反例としては、(a)$x$は正である。(b)$a$を0でない定数としてある実数$x$があって$x^2=ax$を満たす時$x=a$である。などですね。一般には(a)(b)も真、偽は確定できませんね。いわゆる情報不足というやつです

(注)Advanced

(a)においては$x$の値をこちらが指定する(例えば$x=1$, $x=\pi$など)と、真偽が定まる(すなわち正しいか正しくないか決定する。)ので、これを実数値$$xが与えられた時真偽を返す(英語で言えばTrue or False)のでこれを$x$の関数とみて命題関数と呼びます。また、(b)については「ならば」という用語を用いて

(b`)$a$を0でない定数として実数$x$に対して$x(x-a)=0$ならば$x=a$である。

というしたらこれは命題になりこの真偽は偽です。これまた少し論理学的な話となるのですが$x$が具体的な数でなく一般の数の代わりとして用いられているからですね。

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必要条件・十分条件

さて次は問題の必要条件十分条件です。定義は上に述べた通りです。まあそう言ってもなかなか伝わりづらいものだと思うので、以下いくつか言い換えや説明をします。

まず必要条件という単語だけでなく、数学の答案の中では「必要である」や「~でなくてはならない。」などいくつか同義な言葉が登場します。これらの意味を今日根本的に理解してしまいましょう。

まず「$A$は$B$の必要条件である。」とは、上で定義で述べた通り「$B$ならば$A$が成立する。」ということです。もう少し詳しく言い換えますと命題$B$が正しい時ならばいつでも命題$A$が成立する、ということです。これでもまだピンとこないという方のためにもう一歩踏み込んで言い換えましょう。命題$A$が真とならない限り絶対に命題$B$は真とならない、ということです。(実はここは対偶を用いています。)この表現だと必要という言葉がピンとくるのではないでしょうか。最低限の条件という意味ですね。

例としては、少し数学らしくないもので行くと「第一段階選抜を突破することは、東大に入学するための必要条件である。」などですね。足切りを突破しないと到底東大には合格できませんがもちろん足切りを突破するだけで東大合格はできませんね。また後で問題としていくつ加齢をあげます。

次は十分条件ですね。十分条件においても、数学の答案の中では「十分である」や「~であればよい。」などいくつか同義な言葉が登場します。これらの意味も今日根本的に理解してしまいましょう。

まず「$A$は$B$の十分条件である。」とは、上で定義で述べた通り「$A$ならば$B$が成立する。」ということです。もう少し詳しく言い換えますと命題$A$が正しい時ならばいつでも命題$B$が成立する、ということです。少し気になる方のために補足しましょう。この十分という言葉当たり前ですが上で述べた必要性は基本的には含みません。というのはすなわち、$B$であれば絶対に$A$ではあるけれども、もし$B$が成り立たなくても$A$が成立する場合があり得るということです。

これまた例としては、先ほどのものを用いると「東大に入学することは、第一段階選抜を突破するための十分条件である。」などですね。もう一つ挙げるとすれば数学的なことにはなりますが「$n$が自然数であることは、$n$が整数であるための十分条件。」であるなどでしょうか。皆さんも感覚として理解されたかもしれませんが、往々にして不必要な条件まで含まれていることもあり、強い条件として表現されることもあります。

そして$A$が$B$であるための必要条件かつ十分条件となっている時$A$は$B$に必要十分条件であると定義します。

以上が必要条件十分条件の解説となります。以下少し例題をあげますので確認のため解いてみてください。出典はセンター試験です。

問題

 

$p,q$を以下のような条件とする時次の①〜③について何条件か考えよ。但し$\overline{p},\overline{q}$はそれぞれ条件$p,q$の否定とする。
\[
p: x^2=1, q: x = 1
\]①$q$は$p$であるための〜条件である。

②$\overline{q}$は$\overline{p}$であるための〜条件である。

③($p$かつ$x>0$)は$q$であるための〜条件である。

(平成28年度本試験を改題)

皆さん少し自分の頭で考えてから下に進んでくださいね。

 

 

 

 

 

答えは

①から順に十分、必要、必要十分(条件)

となります。この他にも例年センター試験数学IAの第一問には必要十分関係の問題が並んでいるので演習にオススメです!

以上で必要十分の基本的な話は終わりになりますが、これだけで東大の数学が解けるようにはなりませんし論理関係の話に関しても十分ではないでしょう。しかしながらこの基礎を押さえることなく完璧な答案を作成することは不可能ですし、作成するためには論理の基本を完全に理解し、日々の論述のトレーニングをし論理関係に誤りがないか自分でチェックするのみです。もちろん、自分で自信がない場合は学校の先生などにみてもらうことも重要ですよ。

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Advnced~全称記号と存在記号~

これまた正式には大学数学で扱われるようになるのですが、高校数学でも全称記号と存在記号を用いて答案を書く先生は予備校を中心としてみられますし少しここでも解説しておこうかなと思います。

まず全称記号とは$\forall$という記号で、意味としては「全ての」や「任意の」です。英語のAny, AllのAが上下反転している記号だと考えると覚えやすいでしょう。

次に存在記号とは$\exists$という記号で意味は「存在する」です。これまた英語のExistのEが左右反転している記号だと考えると覚えやすいです。

それでは記号の意味を説明したところで次にこれらの使い方をみます。これらの記号基本的には代数につけ

$\forall x$(条件)、$\exists x (s.t.)$(条件)のように使い、それぞれ任意の$x$に対して(条件)が成立する、ある$x$が存在して(条件)が成立する、という意味になります。ここで$s.t.$はsuch thatの意味ですが省略可能です。

では以下少し用例をあげたいと思います。

$\forall n \in \mathbb{N} a_n>0$は任意の自然数$n$に対して$a_n$は正であるという意味です。

$\exists t \in \mathbb{R} s.t.  x = t, y = t^2-t$はある実数$t$が存在して$x = t, y = t^2-t$が成立するという意味ですね。軌跡の問題を正確に記述する時このように書いたりします。

最後にこれまた大学の範囲となりますがこれらの全称記号存在記号を用いると極限の正確な定義が書けるのでそれを紹介しておきます。

$\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=a \Leftrightarrow \forall \varepsilon>0 \exists N_0 \in \mathbb{N} s.t. (n \geqslant N_0 \Rightarrow |a_n – a|< \varepsilon)$

定義域を開集合$I$とする実数値関数$f(x)$に対して

$\displaystyle\lim_{x \to x_0}f(x)=b \Leftrightarrow \forall \varepsilon>0 \exists \delta > 0 s.t. ((|x-x_0|<\delta \land x \in I )\Rightarrow |f(x) – b|< \varepsilon)$

となります。まあこれは余談のようなものなので理解できなくても大丈夫です笑。

本日の記事としては以上になります。読んでいただきありがとうございました!

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